天丼とは
天丼
同じボケやギャグを、二度、三度と繰り返すことによって笑いを生み出す手法。天丼に海老天が二本入っていることに由来すると言われる。
概要
お笑いの世界の専門用語として、ときおり耳にする言葉に、「天丼」があります。
ご飯の上に天ぷらが載った「天丼」には、一般的に「海老天が二本入っているから」ということに由来すると言われ、トークやネタのボケの際に、同じことをあえて二度、三度と繰り返すことによって笑いを取るテクニックのことを意味します。
お笑い用語として天丼と言えば、同じギャグやボケを二度、三度と繰り返して笑いをとる手法のことを指す。
余り間を置かずに畳み掛けるように使ったり、他者のボケに乗っかる形で重ねる場合は、かぶせ(る)と称することもある。
言葉だけに限らず、特定の動作や身振り手振り等、ウケの取れるものならなんでも含む。
短時間のうちに連発することもあれば、相手が忘れた頃や別の話に切り替わった後に、突然前の話で面白かった部分を引っ張ってくるなど、手法は様々である。
言葉だけでなく、身ぶり手振りやリアクションなどを繰り返し、また、間を置かずに繰り返すこともあれば、少し経ってからかぶせることもあるなど、天丼は、幅広く解釈ができ、あちこちで見られる技法です。

意識してバラエティのテレビ番組などをチェックしていれば、天丼が使われるシーンは数多く見られます。
それほど、天丼は、お笑いの技術として一般的に使われる技法です。
ただし、「天丼」という言葉について言えば、番組上では滅多に使われることはなく、それほど一般化された言葉ではありません。
お笑いの技術としての天丼の具体例としては、たとえば、若手お笑いトリオのハナコが演じるコントネタの『天空龍』が挙げられます。
このネタでは、カードゲームに熱中している岡部さんと菊田さんの二人が、「天空龍」カードを乱発し、その荒唐無稽さに、秋山さんがツッコミを入れます。
天空龍というカードのボケをかぶせながら、徐々にボケをエスカレートさせ、たたみかけていく、という構成になっています。
M-1グランプリで、高得点を叩き出して優勝を果たしたミルクボーイの漫才ネタも、天丼を駆使している一例と言えるでしょう。
リズムよく、同じ構造のボケを、微妙に変化させながら重ねる手法が活き、ミルクボーイは、他にも、この構造のネタを数多く披露しています。
M-1グランプリの優勝者で言うと、2021年の錦鯉の決勝のネタでも、「天丼」が使われています。
ネタ中、バナナを罠にして置いて、猿を捕まえようとするも、自分がバナナに惹かれて捕まる、という下りがあります。
このバナナの下りを、たたみかけるように三回繰り返しますが、この手法も「天丼」と言えるでしょう。
こういったコントや漫才のように、ネタのなかで天丼が使われることもあれば、普段のトークで天丼が使われることもあります。
一度目にダダスベリしているにもかかわらず、あえてもう一度繰り返し、天丼を行なった場合、一度目がフリになって笑いが生じる場合もあれば、悪循環にはまってスベリ倒す場合もあります。
トークの流れのなかで天丼が効果的に働くかどうかは、一度目の周りのリアクションや、二度目、三度目の被せ方の調整など、繊細な嗅覚が求められます。
流れのなかで的確に天丼を繰り出すお笑い芸人さんを見ていると、意識的に行っているというよりも、空気を読みながら自然に行なっているようにも見えるので、どのタイミングで、どの被せ方をするか、この辺りに経験やセンスが問われるのかもしれません。