エピソード

粗品と絶対音感とハンドベル

粗品と絶対音感とハンドベル

多才なことで知られるお笑いコンビ霜降り明星の粗品さん。その才能の一つに「音楽」があります。お笑いとは別に、音楽活動にも真剣に取り組み、楽曲制作やライブ活動も行っています。

音楽のルーツとして、粗品さんは2歳の頃からピアノを習い、絶対音感があることでも有名です。

曲を聴いて楽譜にする、いわゆる「耳コピ」もでき、もしお笑い芸人になっていなかったら、オーケストラの指揮者になるのが粗品さんの夢だったようです。

実際、高校時代には周りの楽器ができる同級生を集め、アマチュアでオーケストラを結成し、その際、粗品さんは指揮者を担当。以前、『やりすぎ都市伝説』で、その当時粗品さんが耳コピして書いた葉加瀬太郎さんの『情熱大陸』の楽譜も紹介されていました。

テレビ東京『やりすぎ都市伝説』

それから、粗品さんの絶対音感を物語る上で欠かせないのが、『すべらない話』で披露された、亡くなった父親とのハンドベルに関するエピソードです。

粗品さんの父親は、粗品さんが子供の頃から体が弱く、よく病気にかかっては入退院を繰り返していたそうです。

あるとき、大きな病気で自宅療養中、お医者さんから、毎日水分をこれくらいは摂取するように、と指示を受けた父。寝たきりに近かったので、水を自分で取りに行くこともできず、「水ちょうだい」と大声で呼ぶことも難しいほどでした。

そこで粗品さんの父親は、最初のうちは手拍子を二回打つことで「水」をお願いしていたものの、数日して、こんな風に家族をこき使うようにするのは嫌だと言い、考えた粗品さんは、ハンドベルを購入しに行きました。

実は、粗品さんにもお母さんにも絶対音感があり、どの音がどの音階かが分かるので、そのハンドベルによって、父親が飲み物を欲しているときには、たとえば、「ド」なら水、「レ」ならお茶など、音と飲み物を組み合わせることを提案します。

ハンドベルを使うことで、手を叩くよりもこき使っているような後ろめたさもなく、音楽みたいで楽しいと思える、素敵なアイディアでした。

粗品さんも、粗品さんの母親も、父親の鳴らす音を間違えることはなく、いつも正しい飲み物を持っていくことができ、「ハンドベル」作戦は成功でした。

このエピソードは、『すべらない話』で粗品さんが語っていたもので、この話には、次のような続きオチがあります。

ある日、いつものようにお父さんの寝室から、ハンドベルの音が聴こえてきたのですが、その音が一つではありません。しかも、その音がつたないながらメロディーになっていて、粗品さんが、父親の奏でるメロディーに耳を澄ませていると、それは『きよしこの夜』でした。

カレンダーを見ると、クリスマス。

粗品さんが父の寝室に向かうと、お父さんは仰向けで涙を流しながら、「すまんなぁ、俺のせいで家族に迷惑をかけて、せっかくのクリスマスも台無しやなぁ」と呟き、粗品さんも、その言葉に「そんなことない」と涙が止まらなったそうです。

粗品さんとお父さんが二人で泣いていたら、母親が家中の飲み物を持ってきて、「いや、母ちゃんそういうことちゃうねん」というのが、「すべらない話」のオチでした。

そのときのハンドベルは、「レ」と「ラ」以外大切に持っていると言います。