エピソード

かつて霜降り明星せいやがコンビ解散を決意した理由

かつて霜降り明星せいやがコンビ解散を決意した理由

今でこそ、M-1チャンピオンを経て、若手に限らず、芸人界でもトップクラスの人気コンビとなった霜降り明星。

しかし、下積み時代は全く売れない日々も続き、まだ三年目でお金のなかった頃のせいやさんは、後輩のミキの亜生さんにファミレスのご飯を奢ってあげることもできず、自動販売機でカフェオレを買ってあげた、というエピソードがあるほどに貧乏でした。

苦しかった時代も乗り越え、人気芸人の仲間入りをした霜降り明星。しかし、実は過去にせいやさんには、コンビを解散し、お笑い界を引退しようと決意した瞬間があったと言います。

それはせいやさんが22歳の頃。2015年開催のM-1の3回戦を終え、結果を待っていたときのことでした。霜降り明星の二人は、3回戦の反応に手応えもあり、今年こそ決勝に行ける、と意気込みも抜群。もしこれで駄目なら諦めようか、と松屋で相方の粗品さんと話していました。

そんな風に、ちょうど結果を待っていたタイミングで、その「駄目ならやめる」という決意がいっそう固くなる出来事があったそうです。

当時、仕事もそれほどなかったので暇な日も多かったせいやさんは、ある休日、当時付き合っていた彼女と、朝からひらかたパークにデートに行きました。これから入園する、というときに、彼女が言った一言が次の言葉でした。

「子供ができたかもしれない」

せいやさんは、その衝撃の告白と、M-1の結果が出ていない不安に、どうしていいか分からず、ひとまず彼女の健康も考え、その日のひらかたパークでは二人とも激しい乗り物には乗りませんでした。

父親になるかもしれない、それなら尚のこと、今年絶対に決勝に行かないと。そして夕方、コーヒーカップを降りたせいやさんの携帯電話に、粗品さんからLINEが届きます。

「信じられへん」

粗品さんの言葉に、せいやさんも慌てて結果を確認しますが、霜降り明星は、3回戦敗退。そのとき、引退しよう、と決断し、妊娠の可能性に不安になっていた彼女を安心させるためにも、彼女に、「俺、お笑いやめるわ」と告げます。

二人は、その足で京都の山に行き、夜景を眺めながら、ああ、俺芸人やめたんやなあ、とせいやさんの目からは涙が溢れたと言います。

数日後、解散するなら、終わりもこの場所だろう、とコンビ結成して初めて一緒に酒を飲んだ場所でもある「酔虎伝すいこでん」で粗品さんと会い、霜降り明星の二人は泣きながら次の職業の話などもしたそうです。

しかし、せいやさんは、まだもう少しだけできることをやってみたい、足掻いてみたい、と考え直し、ボケとツッコミを交換する(せいやさんがツッコミで、粗品さんがボケになる)など、試行錯誤を繰り返します。

彼女の「子供ができたかもしれない」という話も、実際は妊娠ではなかったそうです。

その後、しばらく霜降り明星としての挑戦が続き、当時は最後のくだりで、「あちょー、カンフー炸裂、カンフー出さすな、なんなんじゃそりゃ」と締めるなど、地獄の迷走期間を歩むと、再びボケとツッコを戻し、「カラオケ」のネタで翌年M-1の三回戦を突破。

この「カラオケ」というネタと、3回戦の突破が、迷走を続けていた霜降り明星の一番のターニングポイントだったとせいやさんは振り返ります。