ニン
漫才や落語など、お笑いの分野において、その芸人自身の性格や個性といった側面のこと。もともとは歌舞伎の世界の言葉で、その役者の“らしさ”を意味する「仁」に由来すると言われる。
概要
漫才や落語など、お笑いの分野でしばしば耳にする言葉に、「ニン」という用語があります。
ニンとは、その芸人の性格や個性、キャラクターといった側面を指し、あの芸人はニンがある、ネタやトークとニンが合っている、ニンが魅力的だ、といった使い方がされます。
お笑いでは、技術やネタの内容も重要ですが、その芸人自身のニンというものも重要視されています。ニンと合っているネタなら、ネタ自身にも血が通いますし、見ている人に深く届くものになります。
たとえば、ブラックマヨネーズの漫才のネタなどは、ニンが活かされていますし、最近のMー1王者でも、錦鯉やウエストランドも、雅紀さんや井口さんのニンがネタの面白さを高めていると言えます。
また、ウド鈴木さんやチャンス大城さん、狩野英孝さん、あるいは、東西の師匠クラスの芸人さんなど、その人自身がもう面白い、替えの効かない、人間そのものとしての面白さがあるということも、ニンという言葉で表現されます。
ただ、別に「変わった人」でなければいけない、というわけでもなく、お笑いにおけるニンの必要性においては、その人の内面を活かす、といった面もあると言えます。
落語家の柳亭小痴楽さんは、ニンについて次のように説明します。
落語では、“ニン(仁)を知れ”という教えがあります。ニンとは、もとは歌舞伎用語で、役者によって異なる“芸の骨格”のこと。身の程や自分自身の人間性を指す時にも用いられます。例えば、私の場合は、“口が悪い、喧嘩っ早い、先輩に歯向かう、これがお前のニンだ”と、師匠方には言われます。だから、多少の乱暴な語り口もご愛嬌。それがキャラクターとなる世界なんでね。
ニンの意味や境界線を、はっきりと言葉で定義するのは難しいかもしれませんが、必ずしも社会的には長所とならなくても、その人を構成している特徴や個性が、ニンということが言えるでしょう。
一方で、自分のニンはこうだと言って、ほら面白いでしょう、と曝け出すと押し付けがましく、自然にやっているからこそおかしさがあり、滲み出るからこそ魅力がある、ということもあり、この辺りが笑いとニンの複雑さなのかもしれません。
以下のポッドキャストでは、そういったニンの難しさについて、芸人さん同士で語られています。