バランス感覚に長けた、“MC横”芸人
MCは、master of ceremoniesの略で、番組の司会者や進行係を指し、バラエティで言えば、番組の華と言えるでしょう。
一方、テレビ東京の『あちこちオードリー』内で提唱された括りとして、“MC横”というポジションがあります。
MC横とは、「MCの横に位置し、MCの大御所芸能人との距離感を保ちながら、番組を上手に進めることなどを得意とする芸人」を指す役割を意味します。
MC横は、わかる人にしかわからない、繊細な気遣いや笑いのセンスが求められ、司会やスタッフからの信頼も厚くないと務まらないこともあり、実力巧者の芸人が担うポジションでもあります。
この『あちこちオードリー』に、MC横芸人の括りでゲストに呼ばれたのが、陣内智則さんとバイキング小峠さんでした。
以下が、二人の代表的な「MC横仕事」になります。
テレビ東京『あちこちオードリー』
二人の他に、代表的なMC横芸人としては、ノブコブの吉村さん、南キャンの山里さん、大先輩でもある関根勤さんなどがいます。
MC横芸人の特徴として、根っからのいい人であること、粗探しをしないこと、司会者からも愛されていることによって大御所MCが相手でもちょっと厳しいツッコミができること、また、スタッフ側から見ても、いい意味で気遣わずにMC横に選べる気楽さ、などが挙げられます。
この番組内で、二人が語っていた「MC横」のコツが以下の通りです。
小峠
あまり出過ぎない
MCがメインなので、MCより先に発言はしない。仮に自分がちょっと変だなと思っても、いったんMCの出方を待ち、「出ないな」と判断してから言うようにする。
自分だけは笑う
ネタ番組などで、スタッフや出演者が笑っていなくても、自分だけは笑ってあげよう、と思っている。
陣内
ギリを探る
MCの大御所芸能人が、どこまで踏み込んでツッコミを入れてもいいか、ギリギリOKの部分を探る。ただ、MCは大抵大将になって周りから言われることもなくなっているので、意外と踏み込んでいくと喜んでくれる人も多い。
助けたい精神
誰かがスベりそうになったら、自分がなんとしても笑いにしたいという思いが強く、たとえ自分に対する雑ないじりであっても、必死にリアクションをとったりツッコミを入れるようにする。
ただ、自分の後輩芸人がMCで、その横を担うことに関して、以前は陣内さんも葛藤があったと言います。
同い年ではあるものの芸歴としては後輩で、売れないときから一緒にいたブラマヨがM−1で一気にブレークした際、ブラマヨMCの横仕事が入ったときは、抵抗感があったそうです。
しかし、今は、番組全体が面白くなるなら全然行きたいし、メインMCになりたいという時代もあったものの、次第に、「MC横が自分の良さなんだな」と思うようになってきたと語っています。
緩急をつけ、路線が外れ過ぎれば修正し、今どういう状態かという空気を読む察知能力やバランス感覚、MCとの信頼関係を築きながら、ふいに飛び込んでいく勇気と嗅覚などが求められる、MC横の職人芸。
おべっかを使うのではなく、適切な距離感で自立してMCと対峙しながら支える、意外と芸人だけでなく様々なジャンルにおいて、重要なポジションとして今後注目されるようになるかもしれません。